【CACE031】長年続いた左顎の痛みと開口制限|顎関節だけを診ないオステオパシーの症例


「若い頃から、ずっと左の顎が痛いんです」
今回ご相談いただいた患者様は、長年にわたり左顎の痛みに悩まされていました。
これまで歯科医院で診察を受けてきたものの、症状は続いており、最近では硬いものを食べることも難しくなっていたそうです。
「顎関節症は良くなるのでしょうか?」
そう尋ねられた患者様に、私はまず、顎関節だけでなく身体全体の状態を丁寧に確認していくことをお伝えしました。
顎に痛みがあるからといって、顎だけを見ればよいとは限りません。
今回は、顎関節の動きに加え、骨盤、胸郭、頸部、頭蓋周囲まで評価しながら施術を行った症例をご紹介します。
顎関節を身体全体の働きから考える
顎関節は、食事や会話など、日常生活のさまざまな場面で働いています。
また、顎を動かす筋肉は頭部や頸部の筋肉とも機能的に関係しており、顎関節を評価する際には、周囲の筋肉や姿勢、身体の使い方にも目を向けることがあります。
私は患者様に頭蓋骨の模型をお見せしながら、顎関節の構造について説明しました。
顎関節は、下顎骨と側頭骨によって構成されています。
その周囲には咀嚼筋や靱帯、関節包などがあり、複数の組織が協調することで、口を開く、閉じる、噛むといった動作が行われています。
もちろん、顎関節の痛みにはさまざまな原因があり、身体全体の状態だけで説明できるものではありません。
そのため今回は、歯科での診療経過も踏まえながら、顎周囲の状態と全身の動きを確認することにしました。
最初の評価で見えてきた身体の状態
まずは、立った姿勢や身体全体のバランスを確認しました。
姿勢を観察すると、身体の重心がやや前方に寄っている様子が見られました。
触診では、僧帽筋や左側の腸肋筋に緊張があり、骨盤周囲にも左右差が感じられました。
さらに、横隔膜や胸郭、頸部、後頭下筋群などを確認すると、いくつかの部位に動きの制限が認められました。
頭蓋周囲の評価では、特に左側頭骨、左前頭骨、左頭頂骨の周辺に、触診上の機能的な制限を感じました。
これらはオステオパシーの手技的評価によって得られた所見であり、それだけで顎の痛みの原因を特定できるものではありません。
ただ、全身の状態を一つずつ確認することで、顎関節以外にも施術の際に考慮すべき要素が見えてきました。
左顎関節には開口時の制限が
続いて、顎関節の動きを詳しく調べました。
実際に口を開けていただくと、左側の動きに制限が見られ、下顎の位置にも左右差がありました。
特に左顎関節周囲の関節包や、茎突下顎靱帯の周辺には、触診上の強い抵抗が感じられました。
そこで今回は、顎関節だけに集中するのではなく、まず骨盤、胸郭、横隔膜周囲、頸部などを確認し、その後に頭蓋周囲や顎関節へと施術を進める方針にしました。
身体全体の状態を評価しながら、顎関節に無理な負担をかけないことを大切にしました。
再来院時に聞かれた、思いがけない変化
後日、患者様が再び来院されました。
施術後の様子を伺うと、最初に話題に上がったのは、意外にも顎のことではありませんでした。
「顎だけではなく、身体全体が変わったことに驚いています」
詳しく伺うと、歩くときに足が軽く感じられるようになり、呼吸もしやすくなったとのことでした。
さらに、寝付きが良くなり、朝も以前より楽に起きられるようになったそうです。
姿勢についても周囲から変化を指摘され、ご本人も違いを感じているとのことでした。
これらは患者様ご自身が感じられた変化であり、すべてが施術によって生じたと断定することはできません。
それでも、顎以外の身体の状態について多くの変化を感じられていたことは、私にとっても印象的でした。
肝心の顎の痛みはどうなったのか
続いて、最も気になっていた顎の状態を伺いました。
「口を開けたときの左顎の痛みはまだあります。でも、前より軽くなっています」
また、以前より口を大きく開けられるようになったとも話してくださいました。
再評価では、初回に確認した全身の左右差や筋肉の緊張に変化が見られました。
胸郭の動きにも変化が感じられ、左側頭骨周囲の触診所見にも違いがありました。
顎関節についても、開口時の左右差が初回より小さくなっていました。
ただし、痛みは完全になくなったわけではありません。
顎関節の機能を継続して確認しながら、慎重に経過を見ていく必要があると考えました。
見つけた問題を、すべて取り除く必要はあるのか
2回目の施術では、残っている動きの制限を一つずつ確認しました。
左顎関節の関節包にはまだ制限がありましたが、施術によって動きに変化が見られました。
一方で、茎突下顎靱帯の周辺には、依然として硬さが残っていました。
しかし私は、あえてそこを深追いしませんでした。
「制限が残っているのだから、すべて取り除かなければならない」
そう考えることが、必ずしも適切とは限らないからです。
身体の状態によっては、強い刺激が痛みや防御的な筋緊張につながる可能性もあります。
今回は、患者様の反応を確認しながら、無理のない範囲で施術を終えることにしました。
まだ制限が残っていることをお伝えし、今後の変化を見ながら対応していく方針を説明しました。
施術とは、見つかった問題を一度にすべて変えようとすることではなく、そのときの身体の状態に応じて、必要な介入を考えることでもある。
私は、そう感じています。
長年の噛み方と筋肉の使い方
もう一つ気になったのが、右側の頬の下方に感じられた筋肉の硬さでした。
長年の顎の痛みによって、左右の噛み方に違いが生じていた可能性も考えられます。
片側を中心に噛む習慣が続けば、咀嚼筋の働きにも左右差が現れる場合があります。
今回、下顎の動きには変化が見られましたが、だからといって筋肉の状態まで急いで変える必要があるとは考えませんでした。
今後、痛みや顎関節の動きがどのように変化していくのか。
日常の噛み方や身体の使い方も含めて、引き続き確認していくことにしました。
今回の症例から改めて学んだこと
今回の症例で、改めて感じたことがあります。
それは、「顎を診ること」と「顎だけを診ること」は違うということです。
顎関節の痛みを評価するうえで、顎そのものの状態を詳しく調べることは欠かせません。
同時に、頸部や胸郭、姿勢、筋肉の働きなど、周囲の身体機能にも目を向けることで、施術方針を考えるための情報が得られる場合があります。
今回、患者様が最初に実感された変化は、顎の痛みだけではありませんでした。
歩きやすさ、呼吸のしやすさ、睡眠、朝の起きやすさ、姿勢。
こうした身体全体の変化についてお話を伺えたことは、私自身にとっても大切な学びとなりました。
そして、もう一つ大切にしたいことがあります。
それは、見つかった制限をすべて取り除こうとするのではなく、施術後の反応を確認しながら、必要なところに必要なだけ働きかけていくことです。
今回も、まだ残っている問題があります。
だからこそ、一度の施術で結論を出すのではなく、その後の経過を丁寧に確認していきたいと考えています。
評価し、考え、施術し、もう一度評価する。
これからも、一人ひとりの身体と丁寧に向き合いながら、この姿勢を大切に臨床を続けていきたいと思います。
※本記事は、患者様のプライバシー保護のため、個人が推測されやすい情報を省略・一般化した症例紹介です。
※施術後の変化は個人の経過であり、同様の結果を保証するものではありません。顎の痛みや開口障害が続く場合には、歯科・口腔外科などの医療機関で適切な診察を受けることが大切です。
丸山オステオパシー治療院では、
症状だけを見るのではなく、
身体全体のつながりを大切にしながら評価と施術を行っています。
お困りの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
ご予約・ご相談はこちら
症状についてのご相談やご予約は、
LINEからお気軽にご連絡ください。
📱友だち追加後、下記をお送りください。
【ご予約の方】
お名前
ご希望日時
お困りの症状







コメント