【症例028】20年続いた首こりと背中の痛み


―症状を追わず、まず身体の「解放」を考える―
20年以上続いていた首こりと背中の痛み
女性が、長年続いている首のこりと背中の痛みを訴えて来院されました。
パソコンを使う時間が長く、特に仕事をしていると首や背中のつらさを感じるとのことでした。
症状は20年以上前からあり、ここ数年でさらに気になるようになっていました。
また、左の骨盤周辺にはピンポイントの痛みがあり、正座をすると左膝の後ろにも痛みを感じるというお話でした。
お話を伺っていると、身体の症状だけではなく、どこか元気がないようにも感じました。
私はこの時、首のこりだけを施術して終わる症例ではないのではないか、と考えました。
まず必要なのは、身体全体に長年積み重なっている緊張を少しずつ解放していくこと。
初回の施術では、そこを第一のテーマにしました。
首がつらいのに、首の筋肉はそれほど硬くない
座位で身体を確認すると、首や肩の筋肉は、患者様が訴えているほど強く緊張しているわけではありませんでした。
一方、腰部では左側の腸肋筋に明らかな緊張があり、筋腹が膨らんでいるように触知されました。
骨盤の動きにも左右差があり、立位での検査でも左側を中心とした身体のバランスの崩れが確認されました。
さらに仰向けで身体全体を確認していくと、
左下腿の筋緊張
横隔膜周辺の緊張
胸郭の左右差
心膜周辺の緊張
頸椎の機能的な制限
頭蓋部の左右差
頭蓋内の硬膜系に関係すると考えられる緊張
など、いくつかの所見が重なっていました。
ここで大切なのは、「首が痛いから首を施術する」と単純に考えなかったことです。
症状の場所と、身体全体を評価したうえで施術すべき場所は、必ずしも一致するとは限りません。
初回のテーマは「身体の解放」
私はまず横隔膜から施術を始めました。
その後、胸郭や肋骨周辺、脊柱周囲の組織、後頭部から頭蓋部へと、身体の反応を確認しながら施術を進めました。
頭蓋部についても、左側の側頭骨、頭頂骨、前頭骨などの動きを丁寧に確認しました。
専門的には筋膜や硬膜など、身体の連続性を意識した評価ですが、患者様にはできるだけ難しい言葉を使わず、
「首だけを見るのではなく、身体全体の緊張を一度整理していきましょう」
という考え方をお伝えしました。
施術後には、頸部の緊張感や骨盤の動きに変化がみられ、左腰部の筋緊張も軽減しました。
施術を終えた患者様の表情は、来院時より少し明るくなっていました。
初回の施術では、症状を完全になくそうとすることよりも、
身体が少し楽に動ける状態をつくること。
そして、患者様自身が自分の身体に向き合える余地をつくること。
そこを大切にしました。
約2週間後――「首と肩が本当に楽でした」
2回目の来院時、
「前回の施術の後、2週間くらい本当に楽でした」
と話してくださいました。
長時間パソコンを使うと徐々に首や肩の症状は戻ってくるものの、それまでとは明らかに違うということでした。
初回にあった左腰部のピンポイントの痛みもなくなっていました。
一方で、左腕全体に軽いしびれを感じるようになったとのこと。
新しく出てきた症状については慎重に確認しながら、身体全体の状態を再評価しました。
この時点では、横隔膜や腹部の緊張が初回と比べて大きく変化していました。
一方、胸郭や頸部にはまだ左右差が残っています。
そこで、肋骨や胸郭、頸部、後頭部などを再評価し、その時点で身体が必要としている部分を選んで施術しました。
また、慢性的な便秘もあったため、腹部の状態も丁寧に確認しました。
施術後には、自宅で無理なく取り組める方法として、ゆっくりとした腹式の呼吸もお伝えしました。
3回目――症状が減ると、身体の「別の部分」が見えてくる
3回目の来院時には、さらに変化がありました。
首の痛みはほぼなくなり、背中の痛みもパソコン作業を長時間行った時に少し感じる程度。
左腕のしびれもほとんど気にならなくなり、以前感じていた左腰部から股関節周辺の不快感もなくなっていました。
睡眠も改善し、夜中に起きる回数が減っていました。
便通にも少しずつ変化がみられました。
ここまで症状が軽減すると、施術者としても初回とは違った身体の見方が必要になります。
初回には目立たなかった下肢や足部の緊張、骨盤の細かな左右差などが見えてきました。
そこで、この回では足部から下腿、骨盤、胸郭、頭蓋部まで、身体全体のつながりを改めて確認しました。
施術後には、骨盤の動きや身体の水平面でのバランスにも変化がみられました。
4回目――「治す」から「整った状態を保つ」へ
さらに約1か月後。
来院された時の表情はマスクで分かりにくかったものの、目の力が以前とは違って感じられました。
首と背中の痛みは、ほぼ気にならない状態。
以前あった左側の腰部・股関節周辺の不快感も、すっかり忘れているとのことでした。
睡眠もかなり改善し、夜中に起きることも少なくなっていました。
この時に新しく出ていたのは、軽く捻った左足首の違和感でした。
過去に強い捻挫をした経験もあり、今回は足首から外側の下腿にかけて不快感がありました。
そこで、この日は足部・足関節を中心に評価しました。
足関節の動き、距骨周辺、舟状骨や立方骨、腓骨周囲の動きなどを確認し、局所の状態に合わせて丁寧に調整しました。
また、足部だけで終わらせず、身体全体のバランスを再確認しました。
腹部、横隔膜、胸郭、頸部、後頭部、頭蓋部にも大きな問題が残っていないかを確認します。
初回には強く感じられた身体の中心部の緊張感も、今回はほとんど気になりませんでした。
施術後は姿勢も安定し、全体として落ち着いた印象でした。
会話をしていても、以前より発声や言葉の運びが自然になり、私自身も話を聞き取りやすくなっていることを感じました。
この症例で大切にしたこと
この4回の経過を振り返ると、最初から最後まで同じ場所を施術していたわけではありません。
初回は横隔膜、胸郭、脊柱周囲、頭蓋部。
2回目はさらに胸郭や頸部、腹部へ。
3回目には下肢や足部へ。
4回目には、主訴がほぼ落ち着いた状態で新しく現れた足首の問題を評価しました。
身体の状態が変化すれば、施術者が見るべき場所も変わります。
私はオステオパシーの施術では、
「症状の場所を追いかける」のではなく、「その時の身体を診る」
ことを大切にしています。
もちろん、筋膜の連続性や頭蓋・硬膜系、内臓と身体機能の関係などについては、臨床上の考え方や仮説として捉えるべき部分もあります。
だからこそ、最初から一つの原因に決めつけるのではなく、触診や動きの変化を確認しながら、施術後にもう一度身体を評価する。
その積み重ねが大切だと考えています。
今回の学び・気づき
今回、改めて感じたのは、
「最初に何を施術するか」以上に、「最初に何を目指すのか」が重要だということです。
初回、私はこの患者様に対して、首のこりや腰の痛みをすぐに取り除こうとは考えませんでした。
長年、身体の中に抱えてきた緊張があるように感じたため、
まず身体を解放する。
そこから始めました。
その後、症状が変化するたびに身体を再評価し、必要な場所へ施術を進めていきました。
4回の施術を終えた現在、主訴はほぼ落ち着き、施術の目的も「症状を追っていく段階」から、**「良い状態を保ちながら、自分自身の身体と向き合っていく段階」**へ変わってきたように感じます。
そして、もう一つ大切なこと。
患者様の表情や声、会話のテンポ、身体の動き。
こうした数値には表れにくい変化も、臨床では大切な情報になります。
身体が変わると、人とのコミュニケーションにも変化が現れることがある。
今回の症例は、そんなことを改めて考えさせてくれました。
これからも一つひとつの症例を丁寧に振り返り、目の前の患者様から学び続けたいと思います。
丸山オステオパシー治療院では、
症状だけを見るのではなく、
身体全体のつながりを大切にしながら評価と施術を行っています。
お困りの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
ご予約・ご相談はこちら
症状についてのご相談やご予約は、
LINEからお気軽にご連絡ください。
📱友だち追加後、下記をお送りください。
【ご予約の方】
お名前
ご希望日時
お困りの症状







コメント