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【症例046】交通事故後の腰痛と「気力が出ない」状態

執筆者の写真: 丸山稔一
丸山稔一
8 分前
読了時間: 8分

今回は、交通事故後から身体の不調や気力の低下が続いていた方の症例をご紹介します。


※プライバシー保護のため、年齢・事故状況・生活背景など、症例の本質に影響しない一部の情報を変更・簡略化しています。


交通事故をきっかけに続いていた不調

成人の女性が来院されました。

きっかけは、数か月前に遭われた交通事故です。

車に同乗中、大きな衝撃を受け、顔や手などに外傷を負い、歯にも損傷が生じるほどの事故だったそうです。

事故直後には手足のしびれもありましたが、それらは時間の経過とともに軽減していました。

一方で、その後もいくつかの症状が残っていました。

左肩の痛み、慢性的な腰痛、ときどき起こる強い後頭部の痛み。

そして、ご本人が特に改善したいと話されていたのが、

「やる気が起きない」

「気力が出ない」

という状態でした。

初めてお会いしたとき、本来は活動的な方なのではないかという印象を受けました。

しかし、その日の表情や身体の様子からは、どこか活力が失われているように感じられました。

もちろん、これは医学的な検査結果ではありません。

長年患者さんの身体を診てきた中で、視診や触診を通して私が受けた第一印象です。


最初に感じた「身体の中心部」の緊張

問診では、腰は安静にしていても強く痛む状態が続いているとのことでした。

左腕を上げていただくと、ある程度までは上がります。

しかし、最終域に近づくにつれて痛みが強くなります。

そこで身体全体を確認していきました。

背部では僧帽筋に軽度の緊張。

左右の肋骨には縮んだような感覚があり、左腸肋筋には強い緊張が認められました。

骨盤では左側の可動性に制限がみられました。

足部から確認すると、左右の腓骨にも動きの左右差があります。

さらに下肢から筋膜のつながりを確認していくと、内転筋群をはじめ、身体の深部につながる組織にも緊張が感じられました。

そして腹部に触れると、横隔膜周囲に強い緊張がありました。

腹部から胸郭、縦隔周囲、頸部へと続く組織にも、連続した緊張が感じられます。

頸部では左側に強い圧痛があり、後頭下筋群にも著しい硬さがみられました。

頭蓋では、左側頭骨や左前頭骨周囲にも機能的な制限を感じました。

身体を一つひとつ確認していく中で、私は単純に、

「肩が悪い」

「腰が悪い」

という状態ではないと考えました。

大きな外力を受けた身体が、事故後も全体として緊張を抱えている。

特に身体の中心部に、身を守るような強い緊張が残っている。

そんな印象を受けました。

これは医学的な検査によって何らかの特殊な状態が確認されたという意味ではありません。

あくまでも、触診を続けてきた施術者として感じ取った身体の状態です。


身体の中心から、呼吸と動きを取り戻す

そこで、痛みのある場所だけを追いかけるのではなく、

胸郭↓横隔膜↓腹部↓骨盤↓下肢

という身体の中心から下肢までのつながりを意識しました。

同時に、

胸郭↓縦隔周囲↓頸部↓頭蓋

という上半身の連続性も確認していきました。

目的は、強く押したり、無理に身体を変えたりすることではありません。

身体が本来持っている呼吸や動きを妨げている緊張を少しずつ調整し、身体自身が動きやすい状態をつくっていくことです。

胸郭の動きを確認しながら横隔膜周囲を調整し、胸郭から骨盤へ続く身体のつながりを確認します。

さらに下肢から骨盤、体幹へ続く緊張を整え、最後に頸部、後頭部、頭蓋の状態を確認しました。

施術後、もう一度身体全体を観察しました。

施術前から姿勢そのものに大きな問題があったわけではありません。

しかし、表情や身体から受ける印象には明らかな変化がありました。

表情が明るくなり、身体にも少し活力が戻ったように感じます。

左腕も完全ではありませんが、施術前より上げやすくなっていました。

ご本人も、その変化を実感されている様子でした。

帰られるときには、来院時とは違う、明るい表情をされていたことが印象に残っています。


2回目の来院

しばらく期間をあけて、2回目の施術となりました。

お会いした瞬間から、前回とは雰囲気が違っていました。

表情が明るく、明らかに元気な様子です。

体調を尋ねると、

「とても調子がいいです」

と笑顔で答えられました。

さらに、

「頭が以前より働く感じがします」

「天候が悪い日でも、以前ほど気持ちが沈まなくなりました」

「仕事にも戻ることができました」

というお話がありました。

強く感じていた腰痛についても、

「ほとんど気にならなくなりました」

とのことでした。

左腕も以前より上げやすくなっています。

一方で、肩の外旋にはまだ制限が残っていました。

そこで、改めて身体全体を検査しました。


2回目の検査で見えた身体の変化

前回緊張していた僧帽筋には、ほとんど強い緊張を感じません。

上部胸椎にはまだ硬さが残っています。

左腸肋筋にもわずかな緊張はありましたが、初回ほどではありません。

前回動きに制限があった腓骨も、今回は大きな問題を感じませんでした。

そして特に変化が大きかったのが腹部です。

初回は非常に硬く感じられた腹部が、明らかに柔らかくなっていました。

横隔膜にもわずかな硬さが残る程度で、胸郭の動きも改善しています。

頭蓋の触診でも、初回に感じていた動きの弱さは軽減していました。

左側頭骨や左前頭骨周囲には、まだわずかな制限が残っていました。

身体全体を再評価すると、初回に感じていた全身の緊張は大きく軽減しているように感じられました。


ここからは「残っている問題」を探す

身体全体の状態が変化すると、逆に残っている問題が見えやすくなることがあります。

腰にわずかに残る違和感については、仙腸関節周囲の筋膜の状態を確認しました。

左肩については、上部胸椎、上腕二頭筋、肩関節周囲、上腕三頭筋から広背筋へ続く組織などを確認しました。

肩関節の外旋という動きは、肩関節だけで行われるものではありません。

肩甲骨、鎖骨、胸郭、胸椎、そして肩周囲の筋肉が協調して動く必要があります。

そのため、残っている肩の症状についても、肩だけを見るのではなく、胸椎や胸郭、上腕周囲の組織との関係を確認しながら施術を行いました。

施術後に再検査すると、残っていた動きの制限にも変化がみられました。


患者さんからいただいた印象的な言葉

施術を終えて帰られる際、

「次回もお願いします」

と言ってくださいました。

そして、もう一つ、とても印象に残るお話がありました。

事故後しばらくの間、

「頭全体を強く締め付けられているような感覚が続いていた」

そうです。

それが初回の施術後、

「その締め付けが外れたように感じた」

と話してくださいました。

もちろん、この感覚を医学的な現象として説明することはできません。

しかし、ご本人が長く感じていた身体感覚に変化があり、それを具体的な言葉として伝えてくださったことは、経過を考えるうえで大切な情報だと受け止めています。

何より、初診時とは異なる明るい表情で帰られていったことが印象に残っています。


今回の学び・気づき

今回の症例で改めて感じたのは、大きな外傷を受けた後に残る症状は、痛みのある場所だけを見ていては理解しにくい場合があるということです。

交通事故のような強い外力を身体が受けた後、局所だけではなく、身体全体に防御的な緊張が残っているように感じることがあります。

今回、私は触診を通じて身体の中心部に強い緊張を感じました。

そこを出発点として、胸郭、横隔膜、腹部、骨盤、下肢、頸部、頭蓋まで、身体全体のつながりを確認しました。

2回目の来院時には、初回に感じた全身の緊張は大きく軽減していました。

腰の状態や左肩の動きにも変化がみられ、ご本人からは、

「頭が働く感じが戻った」

「仕事に戻ることができた」

というお話もいただきました。

もちろん、こうした変化のすべてが施術だけによるものだと断定することはできません。

身体は時間の経過や生活環境、休養、医療的な治療など、さまざまな要因の影響を受けます。

だからこそ私は、一度の変化だけで判断するのではなく、症例を記録し、再検査し、ご本人のお話を聞きながら経過を追っていくことを大切にしています。

今回、改めて感じたことがあります。

施術とは、単に痛みだけを見るものではないということ。

身体が本来持っている動きを取り戻していく中で、その方の日常生活まで少しずつ動き始めることがあります。

その変化に立ち会えることは、施術者として大きな喜びです。

今後も、残っている肩の状態を中心に、身体全体の変化を丁寧に確認していきたいと思います。

※本記事は施術経過の一例です。施術による変化には個人差があり、同様の症状に対して同じ結果を保証するものではありません。また、交通事故後に強い頭痛、しびれ、めまい、意識の変化などがある場合は、まず医療機関で適切な検査・診断を受けることが大切です。


丸山オステオパシー治療院では、

症状だけを見るのではなく、

身体全体のつながりを大切にしながら評価と施術を行っています。


お困りの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

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