top of page

【症例026】「肛門から腸が出てくる」

  • 執筆者の写真: 丸山稔一
    丸山稔一
  • 12 時間前
  • 読了時間: 6分


オステオパシーに求められる鑑別と責任


はじめに


40代の女性。約1か月半ごとに定期的に来院されている患者様です。


今回は、いつもと少し様子が違いました。


「調子はいかがですか?」


そうお尋ねすると、


「少し前から、肛門から中のものが飛び出している感じがします。ずっと嫌な感じがしていて......。しばらくすると、本当に中から外へ出てきました」


とのことでした。


私はまず、直腸脱などの病気の可能性を考えました。


「肛門科には行かれましたか?」


と尋ねると、まだ受診されていないとのこと。


このような症状は、オステオパシーの施術だけで判断するものではなく、まず医療機関で状態を確認していただく必要があります。


そのことをお伝えしたうえで、


「今日はここまで来ていただいているので、私のできる範囲で身体全体を評価してみましょう。途中で少しでも調子が悪くなったら、すぐに教えてください」


とお伝えし、施術を始めました。


症状の場所だけを追わず、全身を評価する


まず座位で身体を確認しました。


右肋骨の後方から右腸肋筋にかけて緊張があり、右骨盤の動きにもわずかな制限が感じられました。


立位では骨盤の動きを確認し、左右差を評価します。


視診では、水平面で見ると右肩がやや下がっていました。


その後、仰臥位で脚部から骨盤、仙腸関節を評価。


仙腸関節そのもののダイレクトテストでは大きな問題は確認されませんでしたが、恥骨を確認すると右側が下方に位置していました。


今回感じられた骨盤の機能的な制限には、恥骨の動きが関係している可能性があると考えました。


さらに腹部を評価すると、横隔膜にわずかな緊張があり、回盲部周辺、膀胱周囲にも機能的な緊張を確認しました。


胸郭では右側に連続した硬さがあり、さらに頸部や後頭下筋群にも緊張がありました。


頭蓋では、左側頭骨にも機能的な制限を確認しました。


このように、症状が骨盤周囲にあるからといって、骨盤だけを見るのではありません。


身体全体のつながりの中で、どこに機能的な負担があるのかを考える。


これが私が大切にしているオステオパシーの評価です。




今回行った施術


最初に、右側の恥骨の機能障害に対して施術を行いました。


続いて、仙骨と骨盤内の組織との関係を確認しながら、右側の機能障害に対して穏やかにアプローチしました。


膀胱周囲の組織、横隔膜、回盲部などを順に評価し、それぞれの状態に合わせてリリースを行いました。


その後、骨盤底筋も慎重に確認しました。


今回の症状から考えても、骨盤底は非常にデリケートな領域です。


左右ともに緊張が感じられたため、まず右側からコンタクトし、呼吸に合わせてごく軽い刺激を加えながら、組織が自然に変化していくのを待ちました。


さらに右側臥位で肋骨、腸肋筋、身体の深部にある筋膜の連続性を評価。


最後に仰臥位で頭蓋の静脈洞に対するテクニックと左側頭骨のリリースを行い、施術を終了しました。


通常は1か月後の予約ですが、今回は経過を確認するため、3週間後に来院していただくことにしました。




3週間後、思いがけない変化


3週間後、改めて状態を伺いました。


「その後、調子はいかがですか?」


すると、


「前回の治療後から、肛門が楽になりました。そして、中から腸が出てくることもなくなりました」


とのことでした。


症状がなくなったというお話には、私も少し安心しました。


しかし、ここで大切なのは、


症状が改善したから、病院へ行かなくてもよい


ということではありません。


「前回もお話ししましたが、このような症状は注意が必要です。できれば一度、肛門科で状態を確認してください」


と、改めて医療機関への受診をお願いしました。


今回の経過については、施術後に患者様から症状が改善したとの報告があった、という事実として受け止めています。


直腸脱などの病気そのものを、オステオパシーが治療したと判断することはできません。




オステオパシーに求められる「鑑別」という責任


今回、改めて考えさせられたことがあります。


それは、


「これはオステオパシーが扱う機能的な問題なのか、それとも医療機関で診断・治療を受けるべき病理的な問題なのか」


という境界線です。


私はフランスでオステオパシーを学びました。


フランスのオステオパシーでは、施術技術だけではなく、来院された方の状態を見極め、医療機関への受診が必要なのかどうかを判断する能力が非常に重要視されています。


患者様がまずオステオパスを訪ねることも珍しくない環境だからこそ、オステオパスには相応の知識と責任が求められます。


日本では医療制度やオステオパシーを取り巻く環境が異なります。


そのため、施術者自身がより慎重に、


「自分が扱うべき領域はどこまでなのか」


を考えなければならないと感じています。




今回の症例から学んだこと


今回の症例は、私にとっても境界線ぎりぎりの判断を考えさせられるケースでした。


結果として患者様から症状が楽になったという報告をいただきました。


しかし、それだけをもって施術が正しかったと判断することはできません。


むしろ今回の経験から、


病院で診てもらうべき疾患を見極めること。

必要であれば受診やセカンドオピニオンを勧めること。

そのうえで、自分ができる範囲を明確にすること。


この3つの重要性を改めて感じました。


オステオパシーは、症状の場所だけを見るものではありません。


身体全体のつながりを評価することで、思いがけない機能的な関連が見えてくることがあります。


しかし、全身を診ることと、何でもオステオパシーで扱うことは同じではありません。


「診る力」と「診ない勇気」。


その両方が、臨床家には必要なのだと思います。


一流のオステオパスになるには、まだまだ果てしなく遠い道のりです。


だからこそ、目の前の一症例から学び、また次の患者様に向き合う。


それもまた、臨床を続けるということなのだと思います。


丸山オステオパシー治療院では、

症状だけを見るのではなく、

身体全体のつながりを大切にしながら評価と施術を行っています。


お困りの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

ご予約・ご相談はこちら


このバナーをクリックしてLINE追加
このバナーをクリックしてLINE追加

症状についてのご相談やご予約は、

LINEからお気軽にご連絡ください。


📱友だち追加後、下記をお送りください。

【ご予約の方】

  • お名前

  • ご希望日時

  • お困りの症状

※ご相談だけでも構いません。

コメント


ご予約・お問い合わせはこちらから.png
丸山オステオパシー治療院のYOUTUBEチャンネル
bottom of page